【第54回 気象予報士試験 実技1】問2を徹底解説|状態曲線・持ち上げ凝結高度・逆転層
こんにちは!今回は第54回 気象予報士試験 実技1 問2を解説します!
この問題では、名瀬と館野の状態曲線を用いて、
- 逆転層の上端と下端
- 持ち上げ凝結高度
- 空気塊が周囲の気温と同じになる高度
- 逆転層の種類
を読み取ります。
状態曲線の問題では、線を見た瞬間に「難しそう」と感じる受験生が少なくありません。
しかし、問われていることを分けると、基本的には、
↓
露点温度の線を見る
↓
乾燥断熱線をたどる
↓
等混合比線をたどる
↓
湿潤断熱線をたどる
という決まった手順で解くことができます。
この問題で重要なポイント
- 気圧は上へ行くほど小さくなる
- 気温が高度とともに上昇する層が逆転層である
- 逆転層の上端・下端は気温曲線の折れ曲がりから読む
- 地上の空気塊は、凝結するまでは乾燥断熱線に沿って上昇する
- 地上露点温度からは等混合比線を上へたどる
- 乾燥断熱線と等混合比線の交点が持ち上げ凝結高度である
- 凝結後の空気塊は湿潤断熱線に沿って上昇する
- 上昇する空気塊の温度と環境の気温が一致する高度を読み取る
- 逆転層の種類は状態曲線だけでなく天気図や温度場も使って判断する
状態曲線の読み方についてはこちらの記事も参考にしてください!
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■ 問2の問題文
問題文
図5は、名瀬および館野(それぞれの位置を図2(下)に示す)の29日9時の状態曲線と風の鉛直分布である。これを用いて以下の問いに答えよ。
問2(1) 名瀬の状態曲線
名瀬の状態曲線に関する以下の問いに答えよ。
- 名瀬では気温の逆転層がみられる。その上端と下端の高度を10hPa刻みの気圧値で答えよ。
- 名瀬の地上にある気塊が凝結するまで断熱的に持ち上げられたとき、雲が発生する高度を10hPa刻みの気圧値で答えよ。なお、名瀬の高層気象観測地点の現地気圧は985hPaである。
- ②で雲の発生した気塊が、この高度よりさらに断熱的に上昇するとしたとき、この気塊が状態曲線で示された温度と同じになる高度を10hPa刻みの気圧値で答えよ。
- ①の逆転層の種類として最も適切なものを、次の枠内から1つ選んで答えよ。
選択肢:前線性逆転層/沈降性逆転層/接地逆転層
問2(2) 館野の状態曲線
館野では地上から700hPaの間に気温の逆転層が2つみられる。
このうち、高度の高い方の逆転層について、その上端の高度を10hPa刻みの気圧値で答え、逆転層の種類として最も適切なものを、図3を参考にして次の枠内から1つ選んで答えよ。
選択肢:前線性逆転層/沈降性逆転層/接地逆転層
■ 問2の模範解答
模範解答
| 設問 | 解答 |
|---|---|
| (1)① 逆転層の上端 | 740hPa(730hPa) |
| (1)① 逆転層の下端 | 810hPa(820hPa) |
| (1)② 雲が発生する高度 | 960hPa(970hPa) |
| (1)③ 気塊と環境の気温が同じになる高度 | 780hPa(770hPa、790hPa) |
| (1)④ 逆転層の種類 | 沈降性逆転層 |
| (2) 逆転層の上端 | 800hPa(790hPa) |
| (2) 逆転層の種類 | 前線性逆転層 |
本番での解き方
問2は、次の順番で解くと混乱しません。
↓
逆転層の上端・下端を読む
↓
地上気温から乾燥断熱線を上へたどる
↓
地上露点温度から等混合比線を上へたどる
↓
交点から雲底高度を求める
↓
交点から湿潤断熱線を上へたどる
↓
環境の気温曲線との交点を読む
↓
天気図を使って逆転層の種類を判断する
最初から気温、露点温度、乾燥断熱線、湿潤断熱線をすべて同時に見ようとすると、どの線を追っているのか分からなくなります。
■ 問2(1)① 名瀬の逆転層の上端・下端
模範解答
上端:740hPa(730hPa)
下端:810hPa(820hPa)
◇ 逆転層とは
通常、対流圏内の気温は高度が高くなるほど低下します。
↓
気温が低下する
ところが、ある層で高度が高くなるほど気温が上昇していることがあります。
↓
気温が上昇する
↓
逆転層
状態曲線上では、気圧が小さくなる方向、つまり上方へ進んだときに、気温曲線が高温側へ折れ曲がる部分が逆転層です。
最初につまずくポイント
状態曲線では縦軸が高度ではなく気圧です。
- 図の下側:気圧が高い=高度が低い
- 図の上側:気圧が低い=高度が高い
そのため、上端と下端の気圧値は大小関係が逆になります。
| 位置 | 高度 | 気圧 |
|---|---|---|
| 逆転層の上端 | 高い | 小さい |
| 逆転層の下端 | 低い | 大きい |
◇ 気温曲線の折れ曲がりを探す
名瀬の気温曲線を地上から上へたどると、810〜820hPa付近から気温が上昇し始めます。
ここが逆転層の下端です。
さらに上へたどると、740〜730hPa付近から再び高度とともに気温が低下する通常の状態に戻ります。
ここが逆転層の上端です。
逆転開始=下端
↓
高度とともに気温上昇
↓
740〜730hPa付近
逆転終了=上端
読み取り値に幅がある理由
状態曲線は線の太さや目盛りの間隔があるため、折れ曲がりの気圧値を完全に一点で読むことは困難です。
そのため模範解答では、
- 上端:740hPaを中心に730hPaも許容
- 下端:810hPaを中心に820hPaも許容
となっています。
本番では、指定された10hPa刻みで最も近い値を答えます。
■ 問2(1)② 雲が発生する高度
模範解答
960hPa(970hPa)
◇ この設問で求めるのは持ち上げ凝結高度
地上にある空気塊を断熱的に持ち上げると、空気塊は膨張して気温が低下します。
一方、露点温度も低下しますが、気温ほど速くは低下しません。
やがて気温と露点温度が一致すると、空気塊は飽和して凝結が始まります。
この高度を、
持ち上げ凝結高度(LCL)
といいます。
問題文の「雲が発生する高度」は、この持ち上げ凝結高度を求める指示です。
持ち上げ凝結高度の求め方
- 地上気圧985hPaの気温を確認する
- その気温から乾燥断熱線に沿って上へ進む
- 地上の露点温度を確認する
- その露点温度から等混合比線に沿って上へ進む
- 2本の線が交わる気圧を読む
↓
乾燥断熱線に沿って上昇
↓
等混合比線に沿って上昇
↓
空気塊が飽和
↓
凝結開始
↓
雲底高度
名瀬の地上気圧985hPaからこの作業を行うと、乾燥断熱線と等混合比線は、およそ960〜970hPaで交わります。
したがって、雲が発生する高度は960hPaです。
◇ なぜ地上気圧985hPaから始めるのか
状態曲線の最下部を、必ず1000hPaとして考えてはいけません。
問題文では、名瀬の観測地点の現地気圧が985hPaと指定されています。
したがって、空気塊を持ち上げる出発点は1000hPaではなく985hPaです。
ここが最大のひっかけ!
状態曲線の横線に1000hPaがあるため、反射的に1000hPaから作図したくなります。
しかし、本問では、
出発点=現地気圧985hPa
です。
1000hPaからたどると、凝結高度の読み取りがずれてしまいます。
◇ なぜ露点温度から等混合比線をたどるのか
凝結が始まるまでは、空気塊の中で水蒸気が液体の水に変わっていません。
外部との水蒸気の出入りもないと考えるため、空気塊の混合比はほぼ保存されます。
↓
凝結はまだ起きない
↓
水蒸気量はほぼ保存
↓
混合比一定
↓
等混合比線をたどる
そのため、地上の露点温度から等混合比線に沿って上へ進むのです。
線の使い分けを混同しない
| 出発点 | たどる線 | 表しているもの |
|---|---|---|
| 地上気温 | 乾燥断熱線 | 未飽和の空気塊の気温変化 |
| 地上露点温度 | 等混合比線 | 混合比一定での露点温度変化 |
気温から等混合比線をたどったり、露点温度から乾燥断熱線をたどったりしないようにしましょう。
■ 問2(1)③ 気塊と環境の気温が同じになる高度
模範解答
780hPa
(770hPa、790hPaも許容)
◇ 凝結後は湿潤断熱線をたどる
②で空気塊は960〜970hPa付近に達すると飽和し、雲が発生します。
その後、空気塊がさらに上昇すると、水蒸気の凝結によって潜熱が放出されます。
このため、凝結後の空気塊は乾燥断熱線ではなく、湿潤断熱線に沿って気温が変化します。
↓
乾燥断熱線
↓
凝結により潜熱を放出
↓
湿潤断熱線
読み取り手順
- ②で求めた960〜970hPa付近の交点を確認する
- その交点から湿潤断熱線に沿って上へたどる
- 名瀬の環境の気温曲線と交わる場所を探す
- 交点の気圧を10hPa刻みで読む
湿潤断熱線と名瀬の気温曲線は、逆転層の中にあるおよそ780hPa付近で交わります。
したがって答えは780hPaです。
◇ 「環境の気温」と「空気塊の気温」を分ける
この問題で最も混乱しやすいのは、状態曲線に最初から描かれている気温曲線と、自分で持ち上げる空気塊の温度経路を混同することです。
| 線 | 意味 |
|---|---|
| 図に描かれた気温曲線 | 観測された周囲の空気の気温 |
| 乾燥断熱線・湿潤断熱線をたどる線 | 持ち上げた空気塊の気温 |
問題文の「この気塊が状態曲線で示された温度と同じになる高度」とは、
持ち上げた空気塊の気温
=
周囲の空気の気温
となる場所を探すという意味です。
凝結後も乾燥断熱線をたどらない
持ち上げ凝結高度に達した後は、空気塊の中で凝結が始まっています。
凝結によって潜熱が放出されるため、気温の低下率は乾燥した空気より小さくなります。
| 空気塊の状態 | たどる線 |
|---|---|
| 未飽和 | 乾燥断熱線 |
| 飽和 | 湿潤断熱線 |
◇ 逆転層が空気塊の上昇を抑える
名瀬では、810〜740hPa付近に逆転層があります。
逆転層では、高度が上がるほど周囲の気温が高くなるため、上昇してきた空気塊は周囲より相対的に冷たくなりやすくなります。
↓
逆転層に入る
↓
周囲の気温が高くなる
↓
空気塊の浮力が弱まる
↓
上昇が抑えられる
本問では、空気塊と環境の気温が約780hPaで等しくなり、それより上では空気塊が周囲より冷たくなります。
つまり、この逆転層は対流を抑えるふたのように働いています。
■ 問2(1)④ 名瀬の逆転層の種類
模範解答
沈降性逆転層
◇ まず逆転層の高さを見る
名瀬の逆転層は、地面付近ではなく810〜740hPa付近にあります。
したがって、夜間の放射冷却などで地面付近にできる接地逆転層ではありません。
また、名瀬は停滞前線の南側に位置しており、逆転層は前線面そのものによって形成されたものではないと判断できます。
以上から、最も適切なのは沈降性逆転層です。
沈降性逆転層ができる仕組み
高気圧圏内などで空気が広い範囲にわたって下降すると、空気は断熱圧縮によって昇温します。
↓
気圧が高くなる
↓
断熱圧縮
↓
空気が昇温
↓
下層の冷たい空気の上に暖気が乗る
↓
沈降性逆転層
沈降する空気は乾燥しやすいため、逆転層の上側で気温曲線と露点温度曲線の間隔が大きくなることも手がかりになります。
◇ 3種類の逆転層を比較
| 種類 | できやすい場所 | 主な原因 | 見分けるポイント |
|---|---|---|---|
| 接地逆転層 | 地面付近 | 夜間の放射冷却 | 地表から気温が上昇する |
| 沈降性逆転層 | 高気圧圏内の大気下層〜中層 | 下降流による断熱昇温 | 地面から離れた高度にあり、上側が乾燥しやすい |
| 前線性逆転層 | 前線付近 | 冷気の上に暖気が乗る | 温度傾度や風向・風速の変化を伴う |
逆転層の種類は形だけで決めない
状態曲線に逆転層が見えても、その形だけで形成原因を完全に判断することは困難です。
次の情報をセットで確認します。
- 逆転層が地面に接しているか
- 観測地点が前線のどちら側にあるか
- 850hPaの温度傾度が大きいか
- 逆転層付近で風向・風速が変化しているか
- 逆転層の上側が乾燥しているか
■ 問2(2) 館野の高い方の逆転層
模範解答
上端:800hPa(790hPa)
種類:前線性逆転層
◇ 2つの逆転層を区別する
館野では、地上から700hPaまでの間に逆転層が2つあります。
問題で問われているのは、高度の高い方の逆転層です。
地上付近の逆転層ではないため、まず高い方の気温曲線の折れ曲がりを探します。
その逆転層の上端を読むと、およそ800hPaです。
気圧値の大小に注意
「高度の高い方」と書かれているからといって、大きな気圧値を探してはいけません。
↓
気圧は低い
2つの逆転層がある場合、気圧値の小さい側にある逆転層が高度の高い方です。
◇ なぜ前線性逆転層なのか
館野は、地上の停滞前線の北側に位置しています。
前線付近では、下層に冷たい空気が入り、その上を南側の暖かい空気が滑昇します。
前線北側の冷たい空気
南側から流入する暖かい空気
↓
高度とともに気温が上昇
↓
前線性逆転層
また、図3の850hPa気温・風の分布を見ると、館野付近は前線に対応する温度傾度の大きな領域に近く、前線面の影響を受けていることが分かります。
そのため、高い方の逆転層は前線性逆転層と判断します。
図3を使う理由
状態曲線だけを見ると、地面から離れた逆転層であることは分かります。
しかし、それだけでは、
- 沈降性逆転層
- 前線性逆転層
のどちらなのかを確実に判断できません。
そこで図3の850hPa気温・風を確認します。
+
前線に対応する風の分布
↓
暖気が冷気の上に乗っている
↓
前線性逆転層
◇ 名瀬と館野の逆転層を比較
| 地点 | 逆転層 | 種類 | 主な判断材料 |
|---|---|---|---|
| 名瀬 | 810〜740hPa付近 | 沈降性逆転層 | 前線南側、地面から離れた層、上側の乾燥 |
| 館野 | 上端800hPa付近 | 前線性逆転層 | 前線北側、850hPaの温度傾度、冷気の上の暖気 |
問2で受験生がつまずきやすいポイント
- 気圧の小さい方が高高度であることを忘れる
- 気温曲線と露点温度曲線を取り違える
- 逆転層の上端と下端を逆に答える
- 地上気圧985hPaではなく1000hPaから作図する
- 地上気温から等混合比線をたどってしまう
- 地上露点温度から乾燥断熱線をたどってしまう
- 凝結後も乾燥断熱線をたどる
- 環境の気温曲線と空気塊の温度経路を混同する
- 地面から離れた逆転層をすべて沈降性と判断する
- 図3を確認せずに館野の逆転層を決める
■ 問2 解答確認表
| 設問 | 解答 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| (1)① 上端 | 740hPa(730hPa) | 名瀬の気温曲線で逆転が終了する位置 |
| (1)① 下端 | 810hPa(820hPa) | 名瀬の気温曲線で逆転が始まる位置 |
| (1)② | 960hPa(970hPa) | 乾燥断熱線と等混合比線の交点 |
| (1)③ | 780hPa(770hPa、790hPa) | 湿潤断熱線と環境の気温曲線の交点 |
| (1)④ | 沈降性逆転層 | 前線南側、地面から離れた逆転層 |
| (2) 上端 | 800hPa(790hPa) | 館野の高い方の逆転層の上端 |
| (2) 種類 | 前線性逆転層 | 前線北側で冷気の上に暖気が乗る |
この問題で必ず押さえたいこと
↓
高度とともに気温が上昇する層
↓
乾燥断熱線
↓
等混合比線
↓
持ち上げ凝結高度
↓
雲が発生
↓
湿潤断熱線をたどる
+
環境の気温曲線
↓
交点の気圧を読む
↓
状態曲線だけでなく
前線・温度場・風も確認
■ まとめ
- 名瀬の逆転層は810〜740hPa付近にある
- 逆転層の上端は740hPa、下端は810hPaである
- 気圧は上へ行くほど小さくなるため、上端の気圧値の方が小さい
- 地上気温から乾燥断熱線、地上露点温度から等混合比線をたどる
- 両者の交点である960hPa付近が持ち上げ凝結高度である
- 凝結後は湿潤断熱線に沿って空気塊を持ち上げる
- 空気塊と環境の気温は780hPa付近で等しくなる
- 名瀬の逆転層は沈降性逆転層である
- 館野の高い方の逆転層の上端は800hPa付近である
- 館野の高い方の逆転層は前線性逆転層である
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第54回 気象予報士試験 実技1 問2の解説でした!
独学資格塾では、単なる模範解答だけでなく、 「受験生がどこでつまずくのか?」 を重視して解説しています。
訂正・ご意見などありましたら、ぜひコメントで教えてください!
皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
